❤︎出会い❤︎
七年ほど前の事。
私は道に迷い、どうすれば善いのかわからなかった。
その時だった。
「そこのアナタ!」
声が聞こえ、振り向くと金髪で青目のとても可愛らしい女の子が居た。
年齢はわからない。でも、同い歳くらいだ。
私は周りを見渡してから、自分の事を指さした。
女の子は大きく頷いた。
「私はエリス。アナタ、名前は?」
「私は…」
自分の名前がわからなくなる。
なぜかは分からない。思い出せなかった。
「思い出せないの?アナタ、どこから来たの?」
自分の名前も分からない。
どこから来たのかも…
「覚えてない…」
私が泣きそうになった時、エリスと名乗った女の子は抱き締めてくれた。
「大丈夫よ。私と一緒に来てくれたらきっと、リンタロウが何とかしてくれるわ。」
知らない子に着いて行くのは気が引けたけど、頼るしかなかった。
頷くと、遠くの方から声が聞こえた。
「エリスちゃあああん!どこだい!?」
大きな声だった。私は思わず肩を揺らす。
「どうしたの?」
エリスちゃんはきょとんとしていた。
「エリスさん」
「さん付けは厭よ。」
「じゃあ…エリスちゃん。」
そう言うとエリスちゃんは嬉しそうに笑った。
「エリスちゃんの事、探している人が居てる。声がする。」
「本当?丁度良かったわ。でも…私には聞こえないから連れてって。」
聞こえない…?
凄い勢いで叫んで探してるのに…?
そう言えば、周りにはそれっぽい人は居ない。
「じゃあ、着いてきて。私がその人の所まで連れて行く。」
「お願いね!」
エリスちゃんはそう言うと、私の手を握った。
二人で手を繋いで声が聞こえる方向に暫く歩いて居ると、その人は居た。
「エリスちゃあああん!」
エリスちゃんを見つけるとすぐに駆け寄って抱き締めて居た。
「心配したんだよ、エリスちゃん!」
エリスちゃんは溜息を吐いた。
黒の肩程度の髪に紫色の目の男の人。
「おや、君は…」
その男の人は私の方を見た。
私はお辞儀をした。
「リンタロウ。この子、記憶が無いの。」
この人がさっきエリスちゃんが言っていた人か…
「何か身分証みたいなのは持っていないかい?」
私は首を左右に振る。
「困ったねぇ…」
男の人は悩み出す。
私が心配になっていると、エリスちゃんが手を握ってくれた。
「私に着いておいで。」
男の人は私の頭を撫でて、そう言った。
私は二人に着いて行くことにした。
.
.
私はエリスちゃんが着ているような服に着替えさせられた。
「名前がわからないと不便だねぇ。…そうだ、私が考えて上げよう。善いかね?」
私は頷いた。
二人は、色々と考え始めた。
「るな…るなはどうだい?君にぴったりだと思うのだけど。」
「私も善いと思うわ!どうかしら?」
るな…私は名前なんてどうでも良かった。
二人の嬉しそうな顔。それで心が温かくなった。
私が頷くと、リンタロウは腕を広げた。
「おいで、るなちゃん。」
私がどうすれば良いのか戸惑っていると、エリスちゃんが私の背中を押した。
私はリンタロウに抱き締められる。
「心配かも知れないけれど、大丈夫だからね。」
とても落ち着く声だった。
私は少しして眠ってしまった。
❤︎告白❤︎
出会って数年が経って、私は首領の秘書になって居た。
「るなちゃん、少し善いかな。」
「どうしました?」
私は首領が異性として好きだった。
でも、首領の守備範囲は12歳以下まで…
だから私は諦める事にした。
諦めて、いつもの様に一緒に過ごす事を選んだ。
「私は…どうやら、君の事が好きらしい。」
「勿論、恋愛的な意味でね。」
私は頭が真っ白になった。
心臓が煩い。
「私は本気だよ。本当は諦める心算だったけれど…無理だった。」
眉を下げて首領は笑った。
厭なら断っても善いから、と言われた。
「…私も、好きです。」
漸く出た言葉。
「それは、恋愛的な意味で?」
確認するように言われる。
私は頷いた。
首領に優しく抱き締められる。
私も首領の背中に腕を回した。
「大切にするよ。」
首領は私に優しく接吻した。
ーー貴方との幸せが永く続きますように。